と き:2017年6月29日(木)19:00~20:30

ところ:名古屋市教育館 講堂2F

講 師:日本山岳ガイド協会 特別委員 山岳ガイド 島田 靖 氏

演 題:「夏山に向けての安全登山の心得」

学生の時から山に登り続け、年末年始も山にいるので紅白歌合戦は一度も見たことがない。

今回は職業として山に登っている視点からお話したい。ヨーロッパでガイドをする場合、国際ガイド連盟に加盟しなければならず、また一団体では加入できない。従い、日本を統括する団体として日本山岳ガイド協会を平成三年にスタート。ガイド資格認定を主たる事業とし、全国に50団体ある。会長は谷垣禎一氏。成果は協会設立からわずか2年で山の日を制定したこと。将来的には国家認定のガイドにしたい。人様の為に人様に喜んでもらう為のガイドをするのが仕事。24時間クライアントと一緒に過ごす仕事なので、知識や技術だけではなく人間性が求められる。

北アルプス立山の開通が南側にある乗鞍スカイラインより1か月も早いのは日本海気候と内陸性気候の違い。一方北アルプス北側は豪雪となり雪崩がおこりやすい。秋山後半や春山は要注意。また御嶽山の冬山は風速40m以上で気温もマイナス30℃と極めて厳しい。

日本のぶな林は葉が落ちるとふかふかの絨毯となって虫が発生し、それを食べる動物が集まる食物連鎖が起こる。欧米のブナ林は氷河に痛めつけられてブナしかないのに対し、日本は植生が5層となっていて価値があるので自然遺産にも認定された。ハイマツは雪に埋もれて寒さをやり過ごすことで生きている。そして雪が早く溶ける尾根沿いに群生する。一方コマクサは構造土ができる風衝荒原(吹きっさらしの場所)に生育する。

夏の乗鞍岳で実際に起こった遭難として疲労凍死なる事例がある。これは道に迷い、歩き回って疲れて腹が減ってくる。すると眠くなり、そのまま眠ってしまい低体温症となり死に至る。自分で発生する熱量より発散する熱量が多い場合に起きる。一方、山で一番怖いのは風。特に冬山では命取りとなる。次が落石事前に発生しうる場所を調べておくことが肝要。そして雪渓。中が空洞になっているのと、夏になればなるほど表面が固くなり滑りやすくなるので、事前に山小屋に確認しておくこと。

山岳遭難は2015年、2016年に急増した。40歳以上が80%弱。内60歳以上が50%。死者は40歳以上が91%。原因は道迷いが38%、次いで滑落17%、転落16%。道迷いの最大の理由は地図読みが出来ていないと思われる。現在地がわからないと、その先もわからない。従い、スタート地点からしっかり読図が必用。そしてコンパスの使い方を覚えること。一方、滑落・転落は靴が肝山登りで最も大事。マウンテンブーツは4万円前後の軽いものが望ましい。更にインソールは自分にあったものを使うこと。次にストックですが、これは登山道具にあらず。ダブルストックは両手を塞ぐので極力使うべきでない。特に体力のない人は使うべからず。どうしても使うならシングルストック。サポートタイツは機能性のあるものでないと意味がない。安物には要注意。

加齢は確実に体力が落ちる。中でもバランス感覚が激減する。対策は筋肉を鍛えること。一番良い方法は山に登ること。そして自分の山を見つけること。日本百名山よりも一年中登っても飽きない山を作って欲しい

(報告:3431中村弘樹)

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